少しうるさい飲食店の入口での出来事

 

店員『いらっしゃいませ、2名様ですね、始めにお名前お伺いしてもよろしいでしょうか?』

友人『ん、、?飲み物ですか??』

店員『あ..いえ、、あの、お名前を...』

 

僅か数秒のテンポが織りなしたこの奇跡に圧倒されていた。

関西生まれ関西育ち

曲がりなりにも突っ込む事には定評がある自分だが、ただ笑った後に

裏拍で入ることしかできなかった

自粛期間の代償はあまりにも大きかった

 

サンドウィッチマンがM1の王者を取った

あのレベルのネタを野生で実体験した。

 

 

 

 

 

 

久しぶりに居酒屋に行った

何1つ悪い事をしていないはずなのに

違法なんじゃ無いかってぐらいの気持ちだった

 

 

 

娑婆の飯は絶対にうまい

酒ってもんは更にうまい

 

居酒屋のご飯なんてものは

特別なものでも無い限り、

感想を言い合うのは一口目だけだという

暗黙のルールがある気がする。

 

どれほど美しいコーヒーでも

二口目は溜息、三口目にはお互いの会話に集中しているのが、理想だと思っている。

 

 

後は何一つ感じる事なく、

美味しい居酒屋、美しい喫茶店

そんな認識がなくとも

当たり前のようにその店に集まる

そういう様式美がそこにはある。

 

 

 

 

入口で起きたくだらない出来事が

記憶に残ることなんて、本当はなかった

 

 

 

『あちらのお客様がライターを貸して欲しいみたいです』

急にお店の人に言われた

 

バーカウンターの端から、

バーボンのロックが滑ってくるが如く勢いの衝撃

 

 

まるで、『あちらのお客様からです』 と言わんばかりの顔をした店員と、

動揺を隠しきれない ''あちらのお客様'' ご本人

 

それを見た自分は堪えきれず吹き出してしまった

そんな事があるはずがなさすぎる

 

''あちらのお客様''の反応的にも

お店の状況的にも

彼女たちが店員にライターを貸してほしい

と尋ねた事は容易に想像ができた

 

彼女たちの席と店員を経た先に、

自分たちの席がある為、ライターを借りたいと差し出した手の所作がこちらに向いていたのだろうか。

 

仮にも大都会大阪のど真ん中

1秒に5人はライターを借りてそうな世界で

あっけらかんとしている人間に文明を感じた。

 

人類はいつか月にだって火星にだって

平気でたどり着くと確信した。

 

この国で1番月に近いのは

前澤社長ではなく、この目の前の人間だった。

 

自分には宇宙に行くという夢がある

理屈ではなく、感情論の話である

なので目的はまだない

ただ死ぬまでには絶対に宇宙に行きたい

 

ただ我々 現生人類の在り方として、

本当に宇宙を見るべき人間は

あの文明を具現化した存在だと思った。

 

人類の夢の先で

無意味にライターに火をつけて

宇宙船ごと爆ぜては、流星になるべき人間が

目の前にいた。

 

 

面白くて堪らなかった

人をみて笑ったわけでもなく、

馬鹿にしているわけでもない

 

 

ただ好きな友達と会えた嬉しさと

入口でのショートコントで

口角が下がらなくなっていただけだ。

 

 

 

慣れない居酒屋は何度入っても少し緊張する

田舎者なのか小心者なのか

店員に偉そうに大きな態度を取るなんてもってのほかだ

 

できるだけ人を見て笑うなんて事はしたくないと思っているが

 

あまりにもコミカルな芸に

おもいっきり笑ってしまった

 

 

笑いすぎと言われるほどには笑った

 

 

久しぶりに出た娑婆の金曜日に

日本国民の臨界点と、未来をみた。

 

 

本当に世界線レベルでおかしかった

 

平成でも令和でも測れない

裏側の世界

ほど魅力的なものはない

 

連れってくれてありがとう

夕方に起きたのに良い日だった